新橋演舞場の歌舞伎に大満足
新橋演舞場の夜の部を見てきました。一言で言えば、「豪華で面白かったぁ!」。
最初の出しもの『増補双級巴 石川五右衛門(ぞうほふたつどもえ いしかわごえもん)』
南禅寺山門での「絶景かな、絶景かな~」の台詞は巷でもよく聞かれ、この芝居についても知っていましたが、実際に見るのは初めて。しかも五右衛門を演じるのは、吉右衛門様。
序幕の呉羽中納言(桂三)が、追いはぎに身ぐるみ剥がれても、お公家さんの変なプライドが邪魔をして、しずしずと、行列を揃えて、「ふんどし」を長く引きずりながら花道を行くところは大笑い。(江戸の人々の京の公家に対する気持ちがわかったような)
続いての壬生街道の場。ここでは、花道から登場した染五郎演じる此下久吉(羽柴秀吉)と、上手袖から、奪った装束で中納言に化けている石川五右衛門がすれ違うだけですが、バチッと二人の芝居がからみ、たくさんの台詞が行き交う以上の効果。
足利館の奥御殿では、その二人が幼なじみとわかり、それまでの堅苦しい衣装をくつろげて、畳にごろんと腹這いになり、頬杖をつきながらのやりとり。そして、今回のお楽しみ「吉右衛門の宙乗りにてつづら抜け」。大きなつづらからあっと思う間に吉右衛門が出てきます。そのまま宙乗りで引っ込みに。猿之助の公演ではよく宙乗りがありますが、やはりこういう趣向は面白い。客席も大喜びでした。
そして、いよいよ山門。幕が開くと、満開の桜の中、豪華な金の壁に色も鮮やかな牡丹や竜の絵、それに交わる朱と緑の鮮やかな柱でささえられた山門が舞台いっぱい。そしてその中で、あの百日ほども伸びたような大きなカツラ、そして衣装もそれに負けぬほど、錦織りの派手などてらを羽織り、下には黒ビロードの綿入れ、くわえる銀煙管も大きいこと!このような豪壮な舞台と道具に負けぬだけの役者がやらねば、釣り合いがとれない。
「絶景かな、絶景かな、春の眺めは値千金とは、小せえ、小せえ。この五右衛門の目からは値万両。・・・」
と台詞を言う吉右衛門様、はい、かっこいい!!
山門がせり上がるときは、圧巻、ドキドキ。下から対照的にすっきり清楚に白の巡礼姿、手に柄杓を持った久吉が表れると、もうただただため息だけ。で、久吉の台詞、「石川や、浜の真砂はつきるとも、世に盗人の種はつきまじ・・・巡礼に」となり、五右衛門が「エイ」と小柄を投げると、下で久吉がぴたりと手にした柄杓を振り上げて、見事にその小柄をよける。そこで、チョーンと析が入り。久吉の「御報謝を」、それをきっとにらみおろす形で決まる。
もう、この後、ストーリーはどうなるなんてどうでもよくて、まさに歌舞伎が音楽と色彩という「様式美」の極致であることを納得。
最後の部の浅葱幕前の大薩摩、人間国宝でこの春勲章を受章された鳥羽屋里長と、杵屋栄津三郎でした。貫禄あったです。
二つめの出し物は福助の『京鹿子娘道成寺』
実は、これも見るのが初めて。女形の屈指の大曲であり、また歌舞伎舞踊きっての名作。これも楽しみでした。
感想は。。。福助さんの白拍子花子、きれいで、もうため息ばかり。
イヤフォンガイドの小山観翁さんによると、中村歌右衛門の独特の振りがいくつかあるそうです。序の能を意識した動きの少ない足もとだけの動き。金の烏帽子を鐘の綱にかけて「月」に見立てるとか。。。そのあとのがらっとくだけて、各地の廓の名前を読み込んだ歌での明るい恋の手習いのところ、、鞨鼓や鈴太鼓を使っての踊りでは、囃子方とぴったりで。。。笠を扱っての踊り、小僧さん達の踊りや掛け合い。踊りがこれほど楽しいものとは。
ここで、小僧さんたちが客席に巻き手ぬぐいをしますが。。。残念、一つ前の席の方へ飛んできてました。
なんといっても、衣装の引き抜き。あれどうなっているのか、知りたい。。。。ちゃんと帯もしまっているのに。
あれだけ踊るのに、なぜグズグズにならないのか。(着付けがまだぴたりと決まらぬ身なので、よけいに)
そしていよいよ最後の引き抜きで、正体を現してヘビを表す鱗模様の着物になり、鐘に登って蛇がからみつくように綱にからみついて幕。もう、凄すぎる。。。。
最後は『松竹梅湯島掛額(ゆしまのかけがく)』
八百屋お七を題材にした出し物。最初の吉祥院お土砂の場は、笑って、笑ってもらいましょうの精神で。お客も出演者みんなで楽しんでいました。染五郎の赤ちゃんのことをからかったり。でも、なんで今頃「YMCA」なの?いつもはどっしりした脇役の歌六さんがイナバウワーをやっちゃうなんて!お土砂をかけるとみなへなへな~、吉右衛門の紅長(べんちょう)さんは、それをみんなに振りかけて。。。そのうち、客席から酔っぱらいとガイドさんが出てきて、この人たちにもかけてへなへな~。舞台袖の析を打つ大道具さんにも掛けてしまうは、幕を引く裏方さんにもかけてしまい、幕は、吉右衛門さんが自分で締めていく。
そしていよいよ火の見櫓の段へ。ここは途中で、亀治郎のお七が文楽人形になります。ちゃんと人形遣いの主遣いと、左遣い二人の黒子がついて、足遣いは、下手で音を付けてます。もう4年以上前に、文楽教室でこの火の見櫓の段を見ていたので、よけいに面白かったです。文楽の人形は、まるで本当に生きているかのように、動きもスムーズに見せるのに対し、逆に人形振りのときには、ぎくしゃくとして見せる必要があると、イヤフォンガイドで言っていましたが、なるほど。。。 亀治郎さん、とてもきれいでした。
最後に櫓に登るときには、また人間に戻るのですが、前の場でただのわがままな可愛い十六のお嬢ちゃまが、恋のために、なにごとをもやりとげてしまう「意志の強い女」に変わって、有名な鹿子の段だらの衣装で、櫓のはしごを登っていき、太鼓を叩くのですが、本当に女の執念が感じられました。
ということで、今回は本当にお席料以上の楽しみをいただいたようで、大満足。だから、歌舞伎はやめられません。
残念なのは、歌舞伎座と違って大向こうからの声が少なかったこと。(客層が異なるのでしょうか)よく、歌舞伎は演者だけでなく、大向こうからの声でさらに雰囲気が盛り上がると言われていますが、本当にそう思いました。
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