平成中村座『仮名手本忠臣蔵』Cプロ
浅草寺本堂の裏の仮設小屋で、中村勘三郎丈座頭の平成中村座の十月の公演『仮名手本忠臣蔵』を見てきました。
前回の小屋掛け(平成12年とのこと)興行は、見ていませんので、今回初めて。
江戸時代の歌舞伎はこんな劇場で上演されていたことを、まさに体感できるものでした。
入り口を入ると、ビニール袋を渡されます。靴をぬいで劇場に上がるわけ。昔なら下足番に履き物を預けたのでしょうが、「自己管理」です。
一階は、舞台前方から十列ほど土間席があり、その後方にイス席。そして左右にそれぞれ二列のイス席。この左右のイス席は二階にも同じく作られています。
さらに正面二階席の中央には、大きな金の牡丹の絵の屏風の前に一般席の座布団とは比べものにならない大きな分厚い座布団に、脇息付きの噂の「お大尽席」があります。
(なんでも人力車での送り付きとか・・・)
そして天井から大きな『中村座』と入った提灯が下がっています。
今回は、友人と着物で行くことになっていたので、平場はパスして一階上手後方の一列目の席でした。場内は、江戸時代にタイムスリップですから、マイク設備はなく、観劇の注意(携帯、写真撮影の禁止、休憩時間のことなど)は、すべて人間の声で行っていました。
今回休憩時間が20分が2回、15分が1回。平成12年の公演のときは、やはりトイレが問題だったと聞いていたので、覚悟していたのですが、今回はとても係の誘導がよく、スムーズでした。事前説明(?)とスリッパと分割のアイデアがよかったようです。
さて、本題の舞台。Cプロは「本蔵編」です。
大序 鶴ヶ岡八幡宮 兜改めの場
二幕 桃井館 力弥上使の場
同上 松切りの場
三幕 足利館表門 進物の場
足利館 松の間刃傷の場
八場 道行 旅路の嫁入
九場 山下閑居の場
今回、中村座に客演の片岡仁左衛門丈のたっての希望で、忠臣蔵でもめったに上演されることのない、加古川本蔵一家に光りを当てた場が上演されることになったそうです。
以下ネタバレあり、未見の方はご注意
幕が開くと、中央にお人形。その人形が「東西~東西~}と、これから上演する場面、役者と役柄の説明をします。そしていよいよ本舞台の幕が開くと、舞台に足利直義(新悟)はじめ主な登場人物が居並んでいますが、またこれが「人形ぶり」。
義太夫が語り始めると、スイッチが入ったように、一人ひとり登場人物達が動き始めるという趣向。
その大序の兜改めの場は、初見。
新田義貞討死のとき、周りに散乱していた何十個もの兜のうち、義貞のそれを見分けるために呼び出されるのが顔世御前(孝太郎)。その方法が、兜にたきこめた蘭**の香りであることなどは、鎌倉から江戸初期までの武士の戦場でのたしなみを踏まえていて、面白いと思いました。
ここでは、高師直(彌十郎)がその塩谷判官(勘太郎)より、桃井若狭之助(橋助)のほうにつらくあたるので、アレ?刃傷するのは塩谷判官のはずだけどと不思議に思いました。
二場では、その桃井家の家老の家で、家老が加古川本蔵(仁左衛門)、妻が戸無瀬(勘三郎)、二人の娘の小浪(七之助)、主君若狭之助が短気でキレやすいことを嘆いており、ますます短気なのは塩谷判官だったはず。。。と私の頭の中が混乱。
仁左衛門の台詞が他の人と比べてちょっと聞きづらいかなと。
この場面で使いにやって来る大星力弥(新悟)は、この家の娘小浪の許嫁だとわかります。母の戸無瀬が気をきかせて、使者の口上を聞く役目に娘を出しますが、恥ずかしい恥ずかしいとのそぶりなのに、台詞が「お前の口から直接にわたしの口に」などちょっと大胆なものでニヤリ。
続く松切りの場面で、主君若狭之助が家老の本蔵に、堪忍袋の緒もキレたので、高師直を殺す決心であることを語りけして止めてくれるなと言うと、それを聞いた本蔵がそこまでされたら当然、必ずやりとげよと主君を励まします。
で、主君が傲然と引っ込むと、この本蔵、大急ぎで小判や進物を用意させ、馬で大急ぎに高師直のところに駆けつけるのです。馬の足の人、立派。本物の馬で花道を駆けつけていくように見えましたから!
で、ここまできて、ようやく筋がいつもの知っている「忠臣蔵」の筋立てに。
三場 足利館表門 ちょっとおかしみのある場面。
高師直(本人は門の前に置かれた駕籠の中という設定で姿なし)、で家来の*が本蔵がやってくると聞いて、きっと意趣返しに来たのだろうから、返り討ちにしてやろうと、家来どもに切ってかかる練習をしたりします。しかし、実際は進物を持ってきて、しかも自分の袖にも切り餅一つ入れてくれたりするので、コロッと手のひらを返した扱いに。
で、陪臣だからと遠慮する本蔵を「いいから」と伴って足利館に伴うということに。
松の間、屏風の陰に本蔵が隠れて見ていると、何も知らぬ若狭之助が師直を切ってやろうとやってきますが、すでに賄賂を受け取っている師直、もう最初から自分の刀を投げ捨てて、低姿勢。。。出鼻をくじかれ、若狭之助は捨て台詞を残して去って行きます。
あとからやって来た塩谷判官には、師直は、自分が横恋慕する顔世御前からの拒絶の手紙に激怒したこともあり、かえって辛くあたり、我慢していた塩谷判官もさすがに我慢がならず、斬りかかってしまいます。で、屏風の陰から飛び出した本蔵が後ろから塩谷判官を抱き止めるということに。
八場 勘三郎と七之助の親子の道行きの場面。
もうすでに塩谷判官は切腹、家は断絶、小浪の許嫁力弥も閑居した父大星由良之助とともに京の郊外山科へ。ちょっとお饅頭など食べてしまったし、舞踊なので、居眠りしてしまいました。(街道を行く大名行列や、富士山がどんどん遠ざかっていったり、大道具さんの仕事が面白かったかな)
そして今回のプログラムの最後、九場
力弥の嫁にと白無垢姿の娘を伴ってきた戸無瀬。衣裳が赤。それに用意の打ち掛けが金。迎えた大星由良之助の妻、石は、黒の着物。それぞれ印象的な色が舞台に映えてきれいです。でも台詞のやりとりは丁々発止。
孝太郎さん、顔世御前ではどうという見せ場がなかったように感じましたが、この石は、よかった。結婚の引き出物に、主君の本懐を遂げさせず邪魔をした本蔵の首がほしいと言い放つところ。
そして虚無僧姿で現れる本蔵の仁左衛門さん。わざと婿の槍につかれてやって、ここにようやく登場してくる大星由良之助に、くどく場面。
「わたしはあなたです」という台詞がありました。つまり、自分は主人の思いをとげさせず、若狭之助に黙って賄賂を送ることで、家と家臣を守った、塩谷判官を抱き止めたのも、師直を殺さなければ、切腹にはなるまいとの判断だったこと、それが間違いだったこと。
もしかしたら、自分が仇討ちを決心している由良之助と同じ立場に立っていたであろうことなどを語り、さらに師直の屋敷の図面を渡す(映画では大工の棟梁の娘でしたが)わけです。
仁左衛門さんのまさに独檀場。最初に感じたちょっと台詞が弱いなど、どこかへ吹き飛んで、すっかり引き入れられて。腹に巻いた止血のさらしを取る最後の場面は、ああ、いいものを見せてもらったと、大感激。
このCプロでは、勘三郎さんは、仁左衛門に完全に譲っています。
次回はAプロを見ます。楽しみです。
11時に始まり、終演が午後4時。イスは簡易なので、やはり疲れました。
なので、奥山の街並みは、次回ゆっくり見ることに。
中村座の横手にある「團十郎の暫」の銅像を見てから、浅草寺をお参りし、その横の浅草神社も参拝。
仲見世を抜けて、落語家や踊りの世界で有名だという「文扇堂」に入って、ちょっと可愛い房付きのネコの扇子を手に入れました。
銀細工の店「もり銀」をひやかし、肉屋さんのど根性トウモロコシ(?)を見て、浅草公会堂方面へ。
小屋であわただしくお弁当を使わず、お腹の虫を我慢させて、おいしいものを食べようということにしてあったので、公会堂前にある老舗のてんぷら屋「中清」へ。
中庭に面した小間で、ゆっくりいただき、眼福ならびに満腹で帰宅しました。
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